ESD21「TPS&生産性」第4回Webフォーラム
~ホワイトカラー生産性向上、働き方改革のためのTPS~
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今回は初めての試みで、ソフト開発の生産性向上、TPSのホワイトカラーへの取組みで経験の深い、お二人の講演で、90名を超える参加者登録あり、驚いています。しかし、第3回までとは異なり、チャットでの質問がなく、参加者にも「TPSが通用するのか?」との疑問を持って聴講されたので、と思いました。講師の公開用講演資料は下記講師欄にUP、ご参照下さい。次回もTMS(Toyota Way Management)のテーマで、TPSのスタッフ部門の活性化、生産性向上について開催予定、ご期待下さい。以下、いつも一言、アドバイス?ある川口氏のコメントです。
今日のテーマはTPSの真髄に触れるものであり、体系的に整理され、TPS(トヨタウェイ)がホワイトカラーの生産性向上、デジタル・トランスフォーメーションにも通用するものであると良く理解できた。また、TPSが単なる改善のテクニックではなく、「原価低減」(Make money in process),「人財育成」を究極の目的としたマネジメントシステムであることを再認識でき、大変楽しい時間を過ごすことができた。講師陣には感謝大です。(文責:ESD21会員、川口恭則)
<以下、案内文>
日本の自動車産業は日米通商摩擦により、トヨタは1984年に米西海岸のNUMMIでGMと合弁で自動車の生産を開始。爾来、米MITの研究者らは、日本のモノづくり強さの代表としてTPSを研究し、彼らはTPSをLean方式と命名した。今やTPS/Lean方式は、製造業の生産現場から設計、販売部門、さらに非製造など業種業態を超えた競争優位のビジネスモデルとして世界中で知られ、学ばれています。
第4回Webフォーラムの講師は、ソフトウェア開発の生産性向上に多くの実績を持つベテランで、自動運転など車載コンピュータなどの組込み系やエンタプライズ系、ビジネス系のソフト開発、ホワイトカラー職場のTPS適用による「働き方改革」でご活躍のESD21会員講師です。ESD21は、2000年代初からTPSのソフトウェアへの適用を学会などで発表、ESD21創設以来、2010年ESD21特別セミナー「TPS/アジャイル開発法」を2015年頃まで継続開催。ESD21若手講師の原田騎郎氏(Attractor Inc.)などは、現在Agileコンサルで活躍中で、TPSを源流としたソフト開発のAgileプロセスが普及しつつある。
今回の招聘講師は、2013年に「TPS/Agile組込みソフト開発セミナー」でデンソーの古畑氏、2014年には、ESD21「TPS/アジャイル開発フォーラム」でオージス総研の山海氏です。当日の講演資料は他講師の講演資料ともUPしています。TPSは「部品や車など大量生産の現場改善手法であり、設計や開発業務、ホワイトカラー職場には無関係」と今でも誤解している企業トップやエンジニアが多い。ぜひ、この機会に先達から多くを学び、皆様の職場への展開を検討頂きたくご案内します。
「第4回のWebフォーラム」の主催者の追加説明文を最後尾に掲載。ぜひ一読頂き、参加登録下さい。
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~~~~~ 記 ~~~~~
■ 日時:2021年10月26日(火)16:00~18:30(接続受付開始15:40)
■ 場所:Zoom会議室(URLは申込者に1日前に メールでお知らせします)
■ 定員:80名 (ESD21会員優先、ビジターの方は10月1日より受付、参加費無料)
■ 講師: (1) 古畑 慶次 氏 株式会社デンソー 技術企画部 (注)お二人の講師略歴は、最後尾を参照下さい。
(2) 山海 一剛 氏 株式会社オージス総研 ビジネスイノベーションセンター
■ プログラム:
〇16:00~16:10 挨拶と進行 ESD21代表理事 黒岩惠 ⇒ 資料(黒岩).pdf
〇16:10~17:05 講演1:講演とQ&A(10分)
〇17:10~18:05 講演2:講演とQ&A(10分)
〇18:10~18:30 予備:総合質疑、討論(20分) この時間はQ&Aと参加者間フリーの討議時間とします
■ 講演1: 16:10~17:05
〇テーマ「生産性向上の勘所~TPSから考えるホワイトカラーの現場改善~」
古畑 慶次 氏 (株)デンソー 技術企画部 ⇒ 資料(古畑).pdf
〇講演概要: 先進諸国に比べ日本のホワイトカラーの生産性は著しく低いと言われて久しい。製造現場の改善、効率化では世界トップクラスである日本が、なぜホワイトカラーの生産性でこれほど後塵を拝するのか? 本講演ではTPSからそのヒントを読み解き、ホワイトカラーの生産性向上の勘所について考える。
<キーワード> ホワイトカラー、生産性、TPS、計画、プロセス
■ 講演2: 17:10~18:05
〇テーマ「TPSで実現するデジタル・トランスフォーメーション」
山海 一剛 氏 (株)オージス総研 ビジネスイノベーションセンター ⇒ 資料(山海).pdf
〇講演概要: 近年、様々な企業でデジタルによる新サービス創出(DX)の動きが盛んです。DX実現には、技術以前に考え方や進め方を変える必要があり、そのためにはTPS/リーンの原理原則の活用が有効なのですが、まだ一般には認識されていません。今回は私のDX支援の経験から、TPS/リーンの活用によるDX成功のポイントをご説明します。
<キーワード> デジタルトランスフォーメーション、DX、アジャイル、スクラム、デザイン思考、JIT、リーン、リーンスタートアップ
■お問合せ、参加お申込み:
下記の登録フォームで参加申込み下さい。お問い合わせは、黒岩(skuro*esd21.jp)まで、メールでお願いします。*を@に置き換えてからメールをお送りください。
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古畑 慶次 氏 (株)デンソー 技術企画部
講師略歴: 1988年日本電装株式会社(現(株)デンソー)入社。研究開発部、基礎研究所を経て、通信技術部、ITS技術部で携帯電話、ナビゲーションシステムの開発に従事。現在は技術研修所にて技術リーダー育成コース(ソフトウェア工学)の開発、講師を担当。また、社内外でソフトウェア開発、プロセス改善、マネジメントの現場指導に取り組む。今年より社内で5ゲン塾を主宰し、課題形成、問題解決指導による成果直結型の技術者育成を実践している。 派生開発推進協議会副代表、博士(数理情報学)、産業カウンセラー(JAICO認定)
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山海一剛(株) オージス総研 ビジネスイノベーションセンター
講師略歴: ・大阪出身&在住、 ・ITアーキテクト ・スクラムアライアンス 認定スクラムマスタ&プロダクトオーナー ・UMTP L4モデラー ・オージス総研グループ「改善塾」塾長&講師 ・2011年以降、製造業を中心にスクラムコーチとして活動、ここ数年は社外のDX人材育成教育コースの設計・実施や、DXコーチとして複数のDXプロジェクトを支援
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以下、「第4回のWebフォーラム」の追加説明
80年代の日米経済摩擦でハイテク分野の日本バッシングは、米トランプ政権の5G通信や半導体産業への中国制裁と同じ。日本の半導体産業に対する米制裁により、89年に世界トップ10の中に、日本は6社(NEC、東芝、日立、富士通、三菱、松下)が占めていたが、今は四日市にある東芝のキオクシアが10位にランクインしているだけ。日本の自動車産業は70年代のオイルショックの時代に、燃費の悪いGM社などの(Guzzlerと呼ぶ)アメ車に対して、小型で低価格、故障のない車は日本車として、世界で存在感を増し、80年代には半導体ほかIT産業とともに、ものづくり大国として日本経済の発展をけん引した。一方では日米通商摩擦により、「自動車産業は製造業の中の製造業」と言われてきた米自動車産業の衰退で、米自動車生産のメッカであるデトロイトでの日本車バッシングが多発した事を我々世代は記憶している。
80年代には日本の自動車メーカは日米通商摩擦回避のため北米に進出、トヨタは1984年にGMと合弁で米西海岸のNUMMIで自動車の生産を開始した。米MITの研究者らは、日本のモノづくり強さの代表としてTPSを研究し、彼らはLean方式と命名し、90年代以降にはUSから欧州、そして世界にTPSがLean方式の名で拡がった。
生産システム研究者でトヨタのFA推進者の筆者らは、TPSの生産プロセの目標は「小さな流れの構築」と定義し、生産現場が主役の調和型自律分散システムと命名した。「モノの流れ」「モノと情報の流れ図」の作成と「見える化」をTPSで強調してきたが、MITの研究者達は「価値の流れ」「VSM=Value Stream Mapping」と「モノからコト(価値)」に抽象化、一般化した点を高く評価。生産現場の改善手法から、広く業種業態を超えて、ヘルスケア、さらにはソフトウェア開発などサービス業へと、適用範囲が拡がった。
現在USで主流になっているScrum,XPなどのAgileソフト開発プロセスが、従来法(WF=Water Fall型)に固執している「日本のソフト業界に、USからTPSが逆輸入してきた」と呼ぶ事もある。Agile手法の中には「かんばん」という手法など20種類以上はあるが、日本のIT業界、ソフトウェア業界がUSのAgile手法の翻訳本などから学び、自社流のソフト開発方式の確立を期待したい。加えて日本の電子情報産業界(JEITA)へのTPSの再学習と実践による普及展開を期待している。80年代から日本のバブル崩壊まで、日本の電子情報産業が繁栄を謳歌しており、三河の田舎の自動車メーカで誕生したTPSを学ぶ必要はなかったのかも知れない。TPSの指導者であったトヨタの張社長(1999年~2003年)の時から、NEC、富士通、松下などの大手へのTPS/Lean方式の導入が今世紀以降であり、海外のTPS導入企業よりも遅れている点は否めない。「USのアマゾンは日本(トヨタのTPSコンサル)に学び勝ち組に、日本のITメーカはUSに学び負け組に」とが小生の言葉。
ソフトウェア開発のAgileプロセスと呼ばれるScrum導入は、日本のソフトウェア開発プロセスの変革に大いに進めたいが、筆者に言わせれば「Scrum導入のレベルに甘んじるな」である。
モノを加工組立する工場の生産性向上は、人間系としてのTPSとFA/ロボットなどの自動化/機械化を導入した「人間・機械系のシナジー」をESD21では強調している。ソフト開発の生産性向上に、ESD21の當仲理事の「ユニケージ法」などのツールによる「ローコードAgile開発手法」適用をESD21としては提案。 TPSをソフト開発に適用したXP/Scrumなどアジャイル手法を超えて、ESD21の當仲理事の「ユニケージ法」や、小生が理事長のAPSOM副理事長の西岡法政大学教授の「コンテキサー」など、「ローコードやノーコード」と最近命名されたソフト開発ツールと、XP/Scrumなどアジャイル手法を両方取り入れた「ローコードAgile開発手法」による抜本的ソフトウェアの生産性向上を期待しています。
ユニケージ法、GeneXus、Sapiensの講演資料: 2013年7月ESD21セミナー「ソフト開発のTPS/Agileプロセスと自動化/機械化」